顧客目線の顧客とは?
ある日の昼下がり・・・
営業Aさん
「シライさん、担当しているZ社のことで相談があります。」
シライ君
「はい、なんでしょう。」
営業Aさん
「Z社は当社にとって大口の顧客ですが、調達担当の方は二言目には価格を下げて欲しい、価格を下げて欲しい、と言っていつも価格を気にしています。こちらから製品の特長や使用していただいた場合のメリットについて説明しても、あまり興味を持ってくれません。」
シライ君
「そうですね、私も以前に担当したことがありますが、Z社はバイイングパワーを前面に押し出してくるイメージがありますね。」
営業Aさん
「そうなんです。確かにたくさん購入してくれるので大切な顧客ではあるのですが、安く買うことしか考えていないように感じられます。細かな仕様やデザインなど、競合他社製品との違いについてあまり興味を持っていないようなんです。」
シライ君
「う~ん。それは営業担当者としては辛いですねえ。」
営業Aさん
「はい、価格だけで決まるのであれば見積書を送付すれば済みますので、営業担当者がわざわざ訪問して提案することなんて不要ではないでしょうか。」
シライ君 「本当に価格だけで決めているのであれば、その通りですね。」
資格対策ドットコム営業Aさん
「えっ?繰り返しになりますが、Z社との商談では価格以外に興味を示されたことはほとんどありませんよ。」
シライ君
「Z社とは長年の取引関係がありますから、調達担当の方は当社製品の仕様や品質についてよく知っていますよね。例えば操作性では業界トップレベルであることや初期不良が少ないことなどです。」
営業Aさん
「まぁ、そうですね。」
シライ君
「当社の直接の競合であるY社についても同様のことが言えると思います。そうだとすると、Z社の調達担当の方はこれまで調達してきた製品の仕様や品質を前提にしたうえで、より安価に調達したいと言っているのではないでしょうか。つまり、仕様や品質に興味がないのではなく、Z社にとってそれらは当たり前になっているということです。」
営業Aさん
「えっ、どういうことですか?」
シライ君
「仕様を高めたり品質を落としたりしないためにはメーカーの努力が必要です。その努力がZ社に理解いただけていないのかもしれません。」
営業Aさん
「・・・と言いますと?」
シライ君
「どの様な改良を行って仕様を高めたのか、どの様な取り組みによって品質を維持できているのか、そういったメーカーの努力を次回お話ししてみてはどうでしょう。もちろん企業秘密を明かすことはできませんが、我々の努力の一端を知っていただければ、見積価格が妥当だと理解いただけるかもしれませんよ。」
営業Aさん
「なるほど・・・。技術・製造部の知り合いにどんな工夫をしているのか聞いてみます。」
シライ君 「そうですね、ぜひお願いします。」
資格対策ドットコム1週間後
営業Aさん
「シライさん、Z社に行ってきましたよ。当社の努力についてお話ししてみたところご存知ないことが多かった様子で、今回は見積価格で購入してもらえるかもしれません。」
シライ君
「そうでしたか。提案内容を変えてみてよかったですね。」
営業Aさん
「はい、アドバイスありがとうございました。今まで顧客目線を意識して使用していただいた場合のメリットを伝えるようにしていましたが、それは現場レベルに限られた話でした。今回は調達担当者の視点を意識したことで問題を解決できたような気がします。顧客目線といっても色々ありますね。」
シライ君
「その通りですね。当社製品を使用してくれる現場の方だけではなく、調達活動に関わる様々な人の視点に立って考えることも顧客目線で考えるには重要ですね。ところで、Z社には当社のどんな工夫を紹介したのですか?」
営業Aさん
「それは内緒です。企業秘密ですから。」
シライ君
「えっ・・・。」 頑張れ、シライ君!